母をメクルメクA.B.C-Zの世界に引きずり込んだ話⑤【完結】
※この記事は、2016年8月25日に別サイトにて公開したものです。
※また、この記事は前回の続きとなりますので、「母をメクルメクA.B.C-Zの世界に引きずり込んだ話①」(https://ebiebilove35.hatenablog.com/entry/2019/03/12/133813)からお読みいただけたら幸いです。
母は、A.B.C-Zを受け入れた。初めは「好みじゃない」だらけだったメンバーの評価も、
河合郁人→面白い、歌も上手い、顔も可愛い
戸塚祥太→可愛い
塚田僚一→人気出るのもわかる
五関晃一→見慣れてきた(おい)
橋本良亮→素直で可愛いし、いい子
と、かなり良い方向に変化していた。
母をA.B.C-Zのファンにすると決意したときに立てた作戦(「母をメクルメクA.B.C-Zの世界に引きずり込んだ話②」参照)の③に従えば、ここで畳みかけるようにMVやコンサート映像を見せ、一気にゴールするはずだった。
しかし、母はA.B.C-Zのいわば「素の表情」に惹かれただけであり、コンサートや歌番組でパフォーマンスをする彼らの姿には無関心だった。よって、作戦③を実行することは難しかった。
母とA.B.C-Zの話を自然に出来るようになったことに、そこそこ満足していた私は、「焦らず徐々に、パフォーマンスにも興味を持ってもらえれば良い」と考え、作戦を見直すことにした。
下手に無理やり音楽番組やコンサート映像を見せれば、「嫌々」という感覚が勝り、彼らの印象を下げることにも繋がりかねない。自然に、ごく自然に彼らの歌って踊る姿を母に見せる流れを作る必要がある。では、私はどう動くべきか。
思い出した。
私が初めてA.B.C-ZのDVD「Za ABC~5stars~」と「ずっとLOVE」を家に持ち帰った日、母は楽しそうに映像を観ていたではないか。特に、メイキング部分には興味津々で。
なるほど、MVのメイキング映像には、母の好きな「A.B.C-Zの素の姿」が詰まっている。メイキング映像を観るということは、当然その作品自体も観るということだ。作戦は決まった。
「メイキング映像ついでにちゃっかりMVを見せる」
その作戦は、大成功だった。
「ねえ、買ってきたDVD一緒に観ようよ。メイキング映像も入ってるし。」
私がそう声をかけると、「えー?」と文句ありげにしていた母であったが、いざ映像が流れ始めると、様々にコメントをはさみながら、楽しそうにしており、結局最後まで集中して観ていた。
これはいける、と思った。
その頃は、ちょうど私が、A.B.C-Zに出会う前の時間を埋めるように、少しずつDVDを買い集めていた時期であったため、ほどよい頻度で母をDVD視聴に誘うには、好都合だった。
母は徐々に、DVDを観ることに抵抗を示さなくなった。DVDを購入したら、一緒に観るのが当たり前になり、音楽番組も観るようになった。(コンサートDVDは厳しかったが。)
この頃、母がこんなことを言っていたのを覚えている。
「やっぱりとっつーが好きかな。はっしーも可愛いんだけど、歌ってるときあんまり好きじゃないんだよね。年も離れてるし、〝かっこいい~♡"とはならないかな。」
この発言を聞いた私は、母はいずれ戸塚担になるものだと思っていた。好きな曲を尋ねたときに母が「ずっとLOVE」と答えたことも、私がそう思うに至るのを助けた。
しかしその数日後、その母の発言が覆ることになるのだ。
【episode5 Shower Gate伝説】
合格発表も無事終え、着々とDVDを買い揃えていった私であったが、アルバムやCDに関しては、金銭面の問題から、しばらくの間はレンタルで我慢しようと決めていた。
しかし、ある日突然〝あの"映像と出会って、私は「ABSea Market」の購入を決断することとなる。
「ダンシング五関先生」
私が観たのは映像の一部ではあったが、清々しいほどにふざけ倒す河合郁人や、目を疑うようなコスチュームに身を包んだ五関晃一の姿は、私の脳内に鮮烈な印象を残した。
「なんだこれ…、観たい…。」
そう思ったが最後、私はCDショップに走った。
「あった…。ABSea Market…!! 」
「あれ?これ、シャワゲのMVも入ってるのか!!」
迷うことなく目的の品を購入した私は、光の速さで帰宅し、すぐさまDVDをデッキに挿入した。
TVの前に腰かけた私の隣には、母の姿があった。
母が戸塚担になるとばかり思っていた私は、Shower GateのMVが始まる直前、「これ、確かとっつーむちゃくちゃ格好良いよ」と言った。
母は、「ふ~ん、楽しみ」とだけ返した。
五関晃一のダンスから始まるMV。
「ひょ~!!格好良い!!!」
「ほんとだね」
Aメロに入り、次々に映し出されるメンバーそれぞれのプライベートを感じさせる自然なカットや、リップシーン。
想像以上の格好良さに興奮した私が
「ねぇ!今の格好良い!」 「ぎゃ~!!郁人くん!!!やばい!!!」
などと騒ぎ立てる隣で、母は終始無言だった。
はずだった。
♪そう思い通りに伝えたいけど
♪嫌われるのも嫌だし
「可愛…「はっし~!!!可愛い!!今の!!ねえ観た!?はっしー!!」
(え……)
驚いて母の顔を観た。
このとき私は初めて、「目がハートになるってこういうことなんだ」と思った。
その後、母はまた無言になったが、私にはわかった。
(アッ、もうこの人、はっしーしか見てないわ…)
曲が終わり、映し出される橋本良亮。母はため息交じりに呟いた。
「……はっすぃー…。可愛い…。」
そんな母を見て、何とも言えない表情をしていたであろう私に、母は弁解するように言った。
「だって!!こんなにニコニコして歌うはっしー、知らなかったもん!」
「♪嫌われるのも嫌だし って、もっと格好つけて歌ってると思ったんだもん!」
全く弁解になっていなかった。
このあと5回はMVをリピートしたと思う。
母は完全に橋本良亮の虜になっていた。
別のMVを見返せば、それまで何も反応していなかった部分で、「はっしー…」と呟いていた。
A.B.C-ZがMステに出演し、「Take a "5" train」を披露した際には、放送直後に7回はリピートした上に、翌日の朝「Mステ観るよ」と言って私を叩き起こしてきた。(なお、何度リピートしても母ははっしーしか見ていなかった。)
この頃には、母もA.B.C-Zのコンサートに行きたいと言うようになっていた。
代々木公演の2日目に入れることになったときには、私はもちろん、母もとても喜んでいた。
時は流れ、迎えた代々木公演2日目。
「うちわは当日しか使えないから、いらないかな」と言っていた母の手には、しっかりと「橋本良亮顔うちわ」が握られていた。
母は、彼が近くにきたときには、私よりも女の子らしい声で、「キャー♡!!」と叫んでいたし、ソロ曲が終わった後には、しばらく「かっこいい…♡」と呟いていたのだった。
夢のような時間が終わったあと、母はちゃっかりバンダナンを購入していた。
「はっしーが、デザインした中でもお気に入りって言ってたからでしょ?」
と私が尋ねると、母は照れくさそうにうなずいた。
私たちは興奮冷めやらぬまま帰路についた。乗り込んだ飛行機の中でも、JRの中でも、更には家に帰ってからも、母は、はっしーのことばかり話していた。「はっしーのことしか考えられな~い」なんてことも言っていた。
現在、母のスマートフォンの待ち受け画面は、橋本良亮である。
彼女の部屋の壁を見れば、うちわの中のはっしーが微笑んでいる。
私は、母をA.B.C-Zファンにすることに成功したのだ。
長くなったが、これが「母をメクルメクA.B.C-Zの世界に引きずり込」むまでの経緯である。
「まわりにえび担さんがいないけど、誰かと気持ちを共有したい」と悩んでいる方がいるかもしれない。
諦めないでほしい。
一番好みじゃなかったはずのメンバーが、担当になっていることもある。
そして、
A.B.C-Zの話を聞くたびに嫌そうな顔をしていた人が、時を経てA.B.C-Zに夢中になることだってあるのだから。
【母をメクルメクA.B.C-Zの世界に引きずり込んだ話 完結】
ご愛読ありがとうございました!次回はスピンオフとして、母がこのときの心境を母目線で綴ってくれます。乞うご期待!